転移先はプロフェットと同じく、最初に立ち寄った小さな魔族の村の前だった。
ノアやヴェルターは違う場所に飛ばされたようだが、それぞれ預けていたスクロールがある。集合することはそう難しくないはずだ。
スクロールを持っていなかったプロフェットと同じ場所に飛べたのは不幸中の幸いだった。
「やっぱ駄目か……」
魔王城に座標を合わせて自分が転移しておけば、それに向かってノアやヴェルターも合流と同時に引き返すことができる。
プロフェットが隣に居るのを確認してすぐにでも魔法を構成しようとしたが、何度発動させても何か別の判定に阻まれて特定の座標を組み込めないのである。
縦座標にいたっては、上下すべてに設定ができなくなっている。
邪魔してくるのは判定なのだから何度か続ければ設定できるのかもしれないが、こんなことをしてくるのは間違いなくカインだ。
そして魔王城が長らく彼の手にあったことを考えれば、魔王城の管理者権限は今カインのもの。
変数・乱数の管理ができる――確定で奇跡を起こせる力を持った彼にリアルラックで挑もうとすれば確実に万、億の桁になるまで試行を続ける羽目になる。
構成に時間がかかり、消費MPもそれなりな転移魔法でそれを行うのは現実的ではなかった。
「仕方ねえ、魔王城の近くまで飛んで、そこからは自力で戻るか」
プロフェットと二人で、設定できる座標のうちもっとも近い場所を選んで転移する。
魔王城が目前に見える位置まで戻ってきて、そこでまた心を折られるような光景が視界に飛び込んできた。
「て……天空の城かよ……」
魔王城、正確には城の一部――おそらくカインが待機していたフロア――が、天高くに浮き上がっていたのである。とうに人の手の届く位置ではない。
呆然としているところへ、ノアとヴェルターがスクロールを使って合流してくる。どうあっても勇者以外を立ち入らせないつもりらしい。
