【BL】お荷物くんの奮闘記

「……そっか。もう、そろそろなんだ」


「ああ」


「あと、どれくらい?」


「もうすぐ、ここまで到達する」


 こんな早くに来るなんて。スルドの影だけじゃ、やっぱりだめか。呼び寄せたのは自分だけれど、それでも名残惜しいものは名残惜しい。


「じゃあ、ちょっと行ってくる」


「……いってらっしゃい」


 いつもの外出の時のように、軽い口調でレツが離れた。

“ちょっと”が数年になってばかりで、彼が帰ってくるまで拗ねていたのが本当に遠い昔のようだ。



帰ってくると分かっているだけ、ずっと幸せだった。



「そうだ、カイン」


 愛用の斧を肩に担いだ彼が、何気なく振り返る。


「明日あたり、西国まで海見に行こうぜ。

おまえ結局魔王になってからこっち、ろくに外出ないままだったろ」


 いつもおれが置いてってばっかだったし、小旅行みたいな感じでさ。

勝手に約束を取り付けてようやく、レツは普段通りの笑顔を見せてくれた。


 この笑顔に何度も救われていた。

彼が笑って大丈夫だと言うなら、どんな絶望的な状況でも絶対になんとかなると信じられた。

そして彼の言葉を真実にするために、自分は戦局を支配することだってできた。