こちらが話を切り出してすぐ、ヴェルターが返してきた。ここまでの経緯を知っているリュータや過保護なノアは一晩休んだ方がいいんじゃないかと言ってきたが、この場所で迂闊に休んでまた方々に飛ばされるのは遠慮したい。


「そうだ、こっちに向かってる間にちまちまスクロール作ってたんだけど、とりあえず二枚ずつ渡しておくよ」


 それぞれに二枚ずつ手渡したことで、ノアも黙った。正確には、大賢者が手ずから作成したスペルスクロールに目を輝かせて見入ってしまったというべきか。

師匠に指示を受けながらの製作で、自分の実力ではないので少々後ろめたいがノアが大人しくなった点に関してはよしとしよう。リュータは行くといえば基本的にはついてくるし、後でどうとでも言いくるめられる。


 あとは――感染の原因を取り除く手段も考えておくと師匠が言っていたが、ちゃんと必要な時に顔を出してくれるだろうか。





 訪問から応接室まで通されるのにそう時間はかからなかった。お茶を出され、ほどなくして使者を寄越してきた本人――占い師一族の後継者とやらが部屋に入ってくる。自分と同い年くらいの女性だ。


 なんか見覚えのある顔だな、と失礼にならない程度に顔立ちを伺う。


「あ! そうだ、お姉ちゃんにそっくり!」