バグの原因になりかねないもの、ということは、勇者の遺志とはおそらく情報の塊だ。勇者の、と言うくらいだから歴代勇者の中の誰かによって残されたもので、そんな知恵なさそうなウリエルは除外。

ウリエル暴走以前からあるとするなら、一番可能性が高いのはやはり、裏側を知り尽くして死んでいった勇者ダイゴか。勇者ダイゴによって残された情報。自分たちが入手できるならこれ以上の手がかりはない。


 そこでふと、疑問が浮かぶ。ダイゴが情報として残したのなら、その宛先は当時の彼にとって最も自分の遺志を継いでくれそうな相棒ユウだろう。彼に直接伝える術がなかった場合を考慮しての念のための保険だったのだろうか。


 念のための保険を管理させるために、バグを産み続ける情報の塊を一般人に管理させるか?


 世界の真理に関わることでバグに感染するというのは、おそらくほとんど間違いない。しかし、無関係の人間に同じ轍を踏ませないように、ある程度工夫を施している、もしくは同じ答えにたどり着くのが確実なヒントだけを残している、と考えるべきではないか。


 「勇者の遺志」自体はバグの原因ではない。だとするなら、ヴェルターたちに話せるような情報をろくに持たないにも関わらずバグに感染している人々は? ……できる限り「勇者の遺志」に触れる前に見当を付けておきたかったが、このままここで考え続けても結論は出なさそうだ。


「ヴェルターたちが準備できてるなら、今すぐにでも依頼主のところに行って話を聞きたい。どこに行けばいい?」


「門を抜けたすぐに、高台が見えただろう。その上に建っている屋敷が占い師一族の家だ」