東国には「神の怒り」によって世界が焼き尽くされる以前から、国を救った勇者との約束事が取り決められていた。「勇者の遺志」と呼ばれる封印されたそれを、来るべき時まで守り、必要な人へ明け渡すようにというもの。

しかし、「神の怒り」から避難すべく勇者の遺志の封印されたシェルターの中に語部一族が避難した際、勇者の遺志に一部触れてしまった子供がいたのだそうだ。


 子供は遺志に触れたことを話すことなく成長し、青年になった頃、突然自分が勇者を継ぐのだと言って外に飛び出していった。

その後青年がどのような経緯を辿ったかまでは現時点では分からないが、青年が国に戻った時、付近の神殿に出た悪魔の話をして呪われ、命を落とした。呪いが国内に多発するようになったのはその頃からだという。


 一般人から聞いた話だとずいぶんファンタジックな表現になってしまっているが、神の怒りというのはおそらくリュータ……ウリエルの暴走だ。

ウリエルによって大陸が焼き払われた際、勇者の遺志とやらの保管された場所を避難所に使ったことで子供がそれに接触。

勇者の遺志に触れることによって得られた何かしらの情報の一部を外に持ち出し、どこかでバグを発生させるような世界の真理にあたる部分にたどり着いてしまった。そしてバグを持ったまま帰国しこの国に広まった、というところだろう。

なんというか、うちの子が大変ご迷惑をおかけしておりますな気分だ。

神の怒りがどうこうと表現されたおかげでリュータはその天災が過去の自分の行動を言われているのだということには気付いていない。

うっかり気付かれたら罪悪感で塞ぎ込んでしばらく使い物にならなくなりそうなので、ひとまずは気付かないままでいてくれるとありがたい。