霞がかっていた思考がクリアになっていく。ホワイトアウトした視界が再び機能するようになった時、目の前にあったのはリュータの肩だった。


「……ん?」


「おはよう、ユウジ。ここどこだか分かる?」


「分かるか」


「東国の門前だよ。移動魔法使ってここまで戻って来れたんだ」


「あー?」


 寝起きの低血圧に揺り起こされているような心地だ。実際は揺り起こされているのではなく、リュータに背負われているようだが。


 そこでやっと、何が起こったのかを理解した。どういうつもりだかは知らないが、彼はユウではなく、自分を選んだのだ。


「……会ったんだろ」


「うん」


「なに、話した」


「約束守れなくてごめんねって言って、ユウもおあいこだって言って、それだけ」


「それだけって」


 あとはユウと二人で移動魔法を使ってここに飛び、ユウジと入れ替わるために意識を手放した身体を荷物と一緒に門の中まで運んでいるということだ。

経緯も確かに気になりはしたが、そんなものは後回しでいい。彼の肩に額を預けたまま、耳元に呟く。


「おまえ……それで、よかったのかよ」


 ずっと待ち望んでいた人との再会だ。かんたんに手放してしまうなど、考えもしなかった。


「うん。だってユウジが言ったんだよ。おれはおれだからって。ウリエルはもういないんだ。おれはリュータで――ウリエルならユウを選ぶかもしれないけど、天城竜太は、渡部勇次を選ぶよ」


「ほんとおまえは……」


「うん」


 せっかく会わせてくれたのにごめんね。リュータが肩越しに少し振り向いて、笑う。


「ユウジ。これからも、よろしくね」