「オレ、今初めて師匠のこと尊敬してる……」


「初めてっておまえな」


 東国の呪いを解く件についても、根本的な解決にはならないにしろ呪いを受けた人間を救うことと、国中に発生するワープゾーンの対処方法を得ることができた時点でほぼ達成も同然だ。それだけでも充分に恩は売れる。


 作戦会議はリュータが帰ってきたことによりいったん中断となった。

起こした火を囲んで久しぶりに二人で食事をとる中、今後の流れについて彼におおまかに説明を済ませておくことにする。


「リュータ、今日はオレが火の番するから、おまえは寝ていいぞ。交代もなしだ」


「えっ、どうして?」


「東国の呪いを解く手段と、あっちまでひとっ飛びできる魔法が習得できそうなんだ。

時間が惜しい。ていうか、今夜は邪魔すんなよ」


「……はあい。でも敵が来たらおれが戦うから、ちゃんと起こしてね」


「そこはおまえを頼るさ」


 すぐに感情が表情にでるリュータは、素直に頷いておきながら子供っぽく唇を尖らせている。


「リュータ」


「なに?」


「あ、……いや、えーと……なんでもない。風邪引かないようにあったかくして寝ろよ」


「え? うん……」


 いざ行動に移そうとしてみると、意外とかける言葉が思いつかないものだ。

彼が会ってこのかた約十年、一度も風邪を引いたことがないのくらい知っている。

そんな心配のされかたなど予想外だったのだろう、リュータも首を傾げた。