勇者ダイゴの感染について推察してみても、呪いの解呪自体にはほとんど役には立たない。

推測通りデバックポイントがどこかにあったのだとしても、この広い大陸からそれを探し出すのは至難の業だろう。たどり着けたところで、プログラミング言語など自分は分からない。


「ってことは、解呪方法は師匠もわからないか」


「だな。しかし、国内に多発するノイズワープゾーンってのはまた別だ」


「違うのか?」


「オレが解決できなかったのは、呪いの完全無効化と呪いによって消滅した人間の蘇生だ。それ以外はなんとでもなる。

ノイズワープゾーンはただの土地の病気みてーなもんだし、ちょっと座標をいじってやればいい」


 続けて、師匠がワープゾーンについての説明を始めた。術式じみた解説ではあったが、教えられるそれらはx軸y軸だのとまるで高校数学だ。

一番最初に教わった、脱出魔法の座標設定と基本的に同じ仕組みのようである。自然発生したワープゾーンについてはまさしく「バグ」だったようだ。


「人体に移った呪いも、呪いの原因になっているそいつの記憶の一部分を隔離すれば解呪できる」


 死にさえしなけりゃな。彼が付け加えた。


「記憶の隔離はそん時またオレ様がどうにかしといてやるよ。座標修正は、ダイゴと同じ世界から来たおまえさんの方が向いてんだろ。修正できるとこまで導いてやるから自分でやってみろ」