先日師匠から引き継いだ記憶の補足事項として、勇者ダイゴの抱えていた疾患の話を聞いた。ダイゴはこれまでの情報からして、おそらくエンジニア職の社会人だったのだろう。

それも、扱っていたプログラミング言語から考えて、十中八九ゲームプログラマーだ。


 こちらの世界の情報を一切知らない師匠は「世界の根幹に関わる法則をダイゴは自在に操っていた」と言うが、名前からして日本人と思われるゲームプログラマーのダイゴならばこの世界にやってきた時点で、この世界の“ゲームっぽさ”にいち早く気付いたはずである。


 師匠から引き継いだ記憶の中に、謎の文字列の飛び交う神殿で文字列を操作してトラップを解除したというものがあった。

あの神殿の情報があったからこそ、東国に発生している世界の呪いがまるでSFの世界で起こるバグのようだとすぐに連想できたのだ。


 憶測ではあるが、「世界の根幹に関わる法則をダイゴは自在に操っていた」という点からして、この世界のどこかには文字通り世界の仕組みをそのままデバックできるポイントがあるのではないだろうか。

奇しくもプログラミングの知識のあった勇者ダイゴは旅の途中で偶然そのデバックポイントにたどり着き、手を加えることで何かを変えようとして、奇病とも呪いとも取れるバグに感染してしまった……そう考えるのが自然な気がする。


 当時ただの魔法使いだった師匠には、その頃まだ魔法を作り出す能力などなかった。既存の蘇生魔法では蘇生できなかったというのも、おそらくは仕様外のゲームオーバーになってしまったがためだろう。


「何か思いついた顔してんな」


「いや、何の解決にもなりそうにないんだけどな」