「殴り合いの喧嘩や戦闘じゃ、こんな脱げ方しないよね」
「あー、ほら、なんだ、特に他意はなさそうだったっていうか。レツも味見とかなんとか言ってたろ」
「こんな、」
今にも泣きそうな顔で、彼が抱き付いてくる。自分の目線よりも少し低い位置、胸元に彼の頭がぶつかった。
「簡単に、ほかのやつに取られるの」
言葉尻が震えていて、いつものように髪を撫でていいものか逡巡する。
「おれのほうが、ずっと――」
「リュータ」
彼の言葉を遮って、顔を上げるリュータにできる限り自然な笑みを見せた。
「それは、好きなやつに言ってやれ」
「……おれ」
応援している体をとって、その先を聞きたくなかったのが、本音だった。
「大丈夫だ、その辺、オレがなんとかするから」
おれのほうがずっと、好きなのに。
遮った言葉の続きは間違いなくこれだ。
これまで長いこと二人でいながら、リュータは自分の向こうに別の誰かを見ていたなんて、それを再認識させられる言葉なんて、平常心で聞いていられるだろうか。
「あー、ほら、なんだ、特に他意はなさそうだったっていうか。レツも味見とかなんとか言ってたろ」
「こんな、」
今にも泣きそうな顔で、彼が抱き付いてくる。自分の目線よりも少し低い位置、胸元に彼の頭がぶつかった。
「簡単に、ほかのやつに取られるの」
言葉尻が震えていて、いつものように髪を撫でていいものか逡巡する。
「おれのほうが、ずっと――」
「リュータ」
彼の言葉を遮って、顔を上げるリュータにできる限り自然な笑みを見せた。
「それは、好きなやつに言ってやれ」
「……おれ」
応援している体をとって、その先を聞きたくなかったのが、本音だった。
「大丈夫だ、その辺、オレがなんとかするから」
おれのほうがずっと、好きなのに。
遮った言葉の続きは間違いなくこれだ。
これまで長いこと二人でいながら、リュータは自分の向こうに別の誰かを見ていたなんて、それを再認識させられる言葉なんて、平常心で聞いていられるだろうか。
