【BL】お荷物くんの奮闘記

「殴り合いの喧嘩や戦闘じゃ、こんな脱げ方しないよね」


「あー、ほら、なんだ、特に他意はなさそうだったっていうか。レツも味見とかなんとか言ってたろ」


「こんな、」


 今にも泣きそうな顔で、彼が抱き付いてくる。自分の目線よりも少し低い位置、胸元に彼の頭がぶつかった。


「簡単に、ほかのやつに取られるの」


 言葉尻が震えていて、いつものように髪を撫でていいものか逡巡する。


「おれのほうが、ずっと――」


「リュータ」


 彼の言葉を遮って、顔を上げるリュータにできる限り自然な笑みを見せた。


「それは、好きなやつに言ってやれ」


「……おれ」


 応援している体をとって、その先を聞きたくなかったのが、本音だった。


「大丈夫だ、その辺、オレがなんとかするから」


 おれのほうがずっと、好きなのに。


 遮った言葉の続きは間違いなくこれだ。

これまで長いこと二人でいながら、リュータは自分の向こうに別の誰かを見ていたなんて、それを再認識させられる言葉なんて、平常心で聞いていられるだろうか。