壁を壊してやってきたリュータが、その話を立ち聞きできていたはずがない。その話題は明らかに挑発だ。
間違っても彼が我を失って突っ込んでいかないように、リュータの左腕をそっと掴む。
一瞥して、レツはまあいいか、と肩を竦めた。
「この場は一時休戦にしようぜ。そういやめちゃくちゃ帰り待たせちまってるやついるし」
魔王級の力を持った最悪の敵が戦う気をなくしたらしいと知って、内心安堵する。
この場で戦闘になれば、リュータはまず遅かれ早かれ天使化を余儀なくされる。
そしてそのタイミングで蘇生・回復の要である自分の方に集中攻撃が来ればこちらの敗北は確定だ。
逆に、自分がレツの攻撃さえ防げればリュータの天使化はレツとは互角か、それ以上に渡り合えるだろうと践んでいる。
そうはいっても危険な賭けであることに変わりはない。
「そうだ、退く前に聞いときたいんだけど。魔王と会ってどうする? 倒すか?」
踵を返しかけたレツが立ち止まって、何気なく投げかける。
「倒せばどうなるか、分かってるか?」
その問いは自分ではなく、リュータの方に向けられているようだった。
「そっちの天使――リュータなら知ってるはずだぜ。一回見てるもんな? ……代替わりの瞬間を」
「……まさか」
それまで無言でレツを睨んでいたリュータが、そこで顔色を変える。
間違っても彼が我を失って突っ込んでいかないように、リュータの左腕をそっと掴む。
一瞥して、レツはまあいいか、と肩を竦めた。
「この場は一時休戦にしようぜ。そういやめちゃくちゃ帰り待たせちまってるやついるし」
魔王級の力を持った最悪の敵が戦う気をなくしたらしいと知って、内心安堵する。
この場で戦闘になれば、リュータはまず遅かれ早かれ天使化を余儀なくされる。
そしてそのタイミングで蘇生・回復の要である自分の方に集中攻撃が来ればこちらの敗北は確定だ。
逆に、自分がレツの攻撃さえ防げればリュータの天使化はレツとは互角か、それ以上に渡り合えるだろうと践んでいる。
そうはいっても危険な賭けであることに変わりはない。
「そうだ、退く前に聞いときたいんだけど。魔王と会ってどうする? 倒すか?」
踵を返しかけたレツが立ち止まって、何気なく投げかける。
「倒せばどうなるか、分かってるか?」
その問いは自分ではなく、リュータの方に向けられているようだった。
「そっちの天使――リュータなら知ってるはずだぜ。一回見てるもんな? ……代替わりの瞬間を」
「……まさか」
それまで無言でレツを睨んでいたリュータが、そこで顔色を変える。
