【BL】お荷物くんの奮闘記

「転移魔法も、あれは旧魔王が開発したモンだしな。魔王復活かってすげえテンション上がったんだよ」


 見た感じ他の仲間もいねえみたいだし、今がチャンスかなと思って。レツがのうのうと話すのを聞きながら、頭はこの場を切り抜ける手段の試行錯誤に移った。本能が、彼を危険だと告げている。


「復讐しに来るの楽しみにしてんのに全然知らねえって顔するし、弱いフリしてどういうつもりかって思ってたら」


 はじめから、彼は敵だったのだ。同じ日本人同士でありながら、ずっと。


「まさかホントに転生しただけだなんてな。あの魔王が無策のまま死ぬわけねえって警戒してたおれが考えすぎだったってか」


 期待はずれだったと言うわりに、面白そうな笑みを崩さない。レツの手が服の上から身体を撫で回し始めてようやく、これからなされる行為が魔王の転生体の始末でもなんでもなく、性欲を解消する目的のそれであることに気が付いた。


「なに青褪めてんの。女じゃねえんだからどうせ一回も二回も変わんねえだろ。……なあ、試させろよ。天使サマを虜にする身体」


 突然こんな場所に飛ばされて魔物に襲われ仲間と再会、さらにその仲間が実は仇敵でふん縛られるも殺されるわけではなく何故か今から掘られるなどという怒涛の展開に頭は正直もうパンク寸前だが、だからこそ頭の片隅で思考が冴えていく。


 目的が始末でないなら、逃走手段を考える時間はある。


 遺跡内部がどうなっているのか、そもそもここはマップ上どのあたりに位置するのかすら分かっていないから、例の脱出魔法を使ったとしてもとりあえず遺跡の外へ転移、なんて真似はできない。


 マップ上の位置が分からなければ座標指定も難しい。牢から脱出できたのは、魔法の構成中手元のスマホから座標をいつでも確認できたからである。両手を縛られている以上、スマホのチェックが必要な魔法は使えない。