えーとこれどういう状況だ。
人魚型魔物の掃討を終え、いやあ助かったとその場に座り込んだ、そこまではよかった。
大斧を床に放ったレツがこちらに近付いてきたから、少し休憩でもして遺跡の構造を訊こうと何とも思わずスマホを眺めていると、つい先ほどまで一緒に戦っていた相手に押し倒されたのだ。
「レツ? なんだよいきなり」
「え、なんだよって、わかんねーの?」
お互いに顔を見合わせて首を傾げる。こちらに乗り上げているレツの方はすぐ合点がいったとばかりに手を打って、そうかと口にした。
「リュータのやつまだ手出してねえんだ」
「なんでリュータの話……おい待て何の冗談だ」
彼の様子があまりにいつも通りだったから、油断していた。気付けば両手が頭上にまとめて縛り上げられている。レツの額から先ほどまで着けていたバンダナが消えているから、恐らく手を縛るこれは布だろう。
「やー、おれユウジのことすげえ気になっててさ」
「はあ」
「最初っから。会った時から気になってたんだぜ。だって」
見た目通りの少年と思えない手つきで、頬から首筋が撫でられる。
「……おれが倒した旧魔王と全くおんなじ顔してんだもん」
明るい声色で、彼が楽しげに笑った。
その瞬間、師匠によって見せられた過去の映像がフラッシュバックする。身の丈ほどの大きな斧を振りかざして、決死の表情で切りかかってきた少年勇者の幼い顔と、目の前の「レツ」の顔が、重なる。
