【BL】お荷物くんの奮闘記

 自己紹介すらしていなかったのを思い出したのか、リュータはばつがわるそうに視線を逸らした。


 リュータ、か。ファミリーネームが先に来ている。


「カインはここに住んでるの?」


「うーん、仮住まいって感じかな。ちょっと連れの仕事でここに来てたんだけど、一度出てっちゃうとなかなか帰ってきてくれなくて。一人で暇だったんだ」


「そっか。その人もきっと嵐で帰ってこれないんだね」


「そうだといいんだけど、なんかぼく忘れられてないかなあ」


 大仰に溜め息をついてみせると、慰めの言葉でもかけてくれようとしたらしいリュータの腹が盛大に鳴った。


「あ」


「お腹空いてるんだ? ごはんにしよっか」


「えっ、悪いよさすがに」


「あのひとが次いつ帰ってくるのか全然分からなくてさ。毎日作りすぎて無駄になっちゃうから、よかったら食べて手伝って」


「う、うん……」


「……たぶん、もうそろそろ近くまで来てる気はするんだけどね」


 いつも作りすぎて寂しい思いをするから、今日は無駄にならなくてよかった。リュータに感謝だ。
 それが、歓迎できない出会いだったかもしれないなんて、今は考えない。



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