「あちこち自然発生した転送トラップだらけで、たとえば家で寝てても起きたら遠く離れた場所で、魔物の巣の中だったりするんだって。住民は国に留まらなきゃいけない理由のある人以外みんな国外に避難してしまって、国の存亡自体が危ないって聞くよ」
「そうなんだ……じゃあおれも、その転送トラップに一人だけ引っかかっちゃったのかな」
東国に身内でも残してきてしまったのだろうか。やけに深刻そうに俯いて、それからタオルありがとうと少年が踵を返す。
「ちょっと、どこ行くの?」
「みんなのところに戻らなきゃ」
「だめだよ、やめたほうがいい」
「それでも行かないと」
「ここから東国まで、歩いてたら一週間以上かかる。それもこんな前も見えないような嵐の中で、無事に辿り着けるわけがない」
彼の手を掴んで引きとめる。否引きとめようとして、自分の非力さ故か容易く引きずられていく。危険を知らせてもなお留まろうとしなかった彼に、ふと思い立って問いかけた。
「地図はあるの?」
「……あ、持ってない」
ようやく止まってくれた。
「あはは。いいもの用意してあげるから、せめて嵐が止むまで待ってなよ」
「そうだね」
「……そういえば名前、聞いてなかったね。君のことは、なんて呼べば良い?」
「ごめん、おれ天城竜太」
「アマキ……リュウタ?」
「リュータでいいよ。名前はそっち」
「そうなんだ……じゃあおれも、その転送トラップに一人だけ引っかかっちゃったのかな」
東国に身内でも残してきてしまったのだろうか。やけに深刻そうに俯いて、それからタオルありがとうと少年が踵を返す。
「ちょっと、どこ行くの?」
「みんなのところに戻らなきゃ」
「だめだよ、やめたほうがいい」
「それでも行かないと」
「ここから東国まで、歩いてたら一週間以上かかる。それもこんな前も見えないような嵐の中で、無事に辿り着けるわけがない」
彼の手を掴んで引きとめる。否引きとめようとして、自分の非力さ故か容易く引きずられていく。危険を知らせてもなお留まろうとしなかった彼に、ふと思い立って問いかけた。
「地図はあるの?」
「……あ、持ってない」
ようやく止まってくれた。
「あはは。いいもの用意してあげるから、せめて嵐が止むまで待ってなよ」
「そうだね」
「……そういえば名前、聞いてなかったね。君のことは、なんて呼べば良い?」
「ごめん、おれ天城竜太」
「アマキ……リュウタ?」
「リュータでいいよ。名前はそっち」
