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遅いなあ。
帰ってくる約束の日を一週間も破ってなお連絡ひとつ寄越さない恋人に思いを馳せながら、今日は帰ってくるだろうかと二人分の食事を作っては無駄になるというルーチンワークを何度繰り返したことだろう。ついて出る溜め息とともに窓の外を見遣れば、大粒の雨が降り始めていた。
運命の時を除いて不死身となった彼が、そこらの敵にやられるわけがないので身の危険に関しては一切心配していない。していなくても、つまらないものはつまらないのだ。
ねえ、そろそろ君が買ってきてくれた紅茶、切れちゃうよ。
一緒に居られる時間はきっともう残り少なくて、なのに相変わらずの道草癖がまた彼らしくて憎めない。彼の側にいたいのはただの自分のわがままだからと、何か用を作らないと強く言えないこの性格が原因なのも分かってはいるんだけど。
窓を殴るような激しい雨が強風とともに吹き荒れる。こういう天気だと気持ちが後ろ向きになりやすくて駄目だな。桟に窓板を引っ掛けようとして、土砂降りの中で何やら大きいものが合わせて降ってきたのが見えた。人だ。
外衣を被って人の落ちてきた場所まで駆けつけると、全身黒い服で、同い年くらいの外見をした少年が目を回していた。
