【BL】お荷物くんの奮闘記

 魔力を風属性に変換し、雷の初級魔法を構成する。襲い掛かってくる前に周囲に雷を放つと、焼け焦げて倒れ伏す仲間を踏み越えて後続が飛びかかってきた。


 こちらの抵抗を警戒して攻撃してこなかったのではなく、少ない獲物を誰が捕らえるかで牽制しあっていただけだったようだ。競争相手が倒されたことで我先にと飛び出してくる魔物達を迎えうつには、こちらの魔法の構築スピードが少しばかり遅い。


 これはやばい、と後退りしかけたその時、自分よりもいくらか小さな背中が前に立ちふさがって武器を一閃させた。


 リュータか、と喜びかけて、その後姿に考えを改める。少年が手にした大斧には、見覚えがある。


「レツ!」


「誰かと思えば……ユウジまた魔物の大群に囲まれてんのな」


「好きでこんなんなってるわけじゃねえし、だいたい今回は偶然だ」


 世間話の口調でのほほんと会話しながらも、レツの手によって人魚がざくざく葬られていく。及ばずながら再び雷の魔法を撃つと、彼がひゅう、と口笛を吹いた。


「ユウジの攻撃魔法見んのはじめてだ! また会えて嬉しいぜ。リュータは?」


「残念ながら不在だ。……ってかレツおまえなんでこんなところにいるんだ」


「なんでって……この遺跡、おれの知り合いが気になってるって言っててさ」


 外出るついでに下見しといてやろうかなと思って、と彼が何体目かの人魚を切り伏せて息を吐く。


「ま、いいや。とりあえずこいつら先に片付けっか!」


 実力の確かな前衛がいるのであれば、この場の勝利はほぼ確定だろう。そうしたら次は遺跡からの脱出だが、調査目的で入ってきたらしいレツに聞けばあちこち歩き回ってマッピングする必要もなさそうだ。

一時はどうなることかと思ったが、なんだかんだでリアルラックがうまいとこ良い仕事してくれているようである。