「ビビった……何だったんだ今の」
安堵も束の間、周囲がやけに先ほどよりも暗いことに気付いてしまう。どう見ても、日のあたる海岸沿いの景色ではない。
「……どっかの遺跡か?」
そしてやはり、周囲には誰もいなかった。また強制単独行動ルートかよ。現在地をスマホで確認しようと画面を点灯させると、その明かりに浮かんできたのは――、
「げっ」
自分を取り囲むようににじり寄る、人魚型魔物の大群だった。
人魚といってもおとぎ話に出てくるようなかわいらしい少女などではなく、いや確かに上半身は女性型ではあるのだが、下半身の魚の部分に大量の触手とぽっかり開いた大きな口がある。
上半身にくっついている女性の頭のような部位は頭として機能しているのではなく、魚の部分が本体なのだろう。
人魚の姿で油断した旅人を触手で捕らえて牙のずらりと並んだ口の中に放り込む……恐らくそんな感じの捕食手順で間違いない。
魔物の巣になっているらしい遺跡の中になど、わざわざ足を運ぶような人間は居まい。つまり自分は、呪いだか何だかの作用によって突如巣の中に放り込まれた餌も同然なのである。
遺跡の中の酸素量も分からない、出口もまだ分からないといった状態で火属性の魔法を使えば酸欠決定だ。
他三属性のうち、水棲生物らしき人魚に水属性の魔法は効果が薄そうである。となると、今選択すべきは風属性または地属性。
安堵も束の間、周囲がやけに先ほどよりも暗いことに気付いてしまう。どう見ても、日のあたる海岸沿いの景色ではない。
「……どっかの遺跡か?」
そしてやはり、周囲には誰もいなかった。また強制単独行動ルートかよ。現在地をスマホで確認しようと画面を点灯させると、その明かりに浮かんできたのは――、
「げっ」
自分を取り囲むようににじり寄る、人魚型魔物の大群だった。
人魚といってもおとぎ話に出てくるようなかわいらしい少女などではなく、いや確かに上半身は女性型ではあるのだが、下半身の魚の部分に大量の触手とぽっかり開いた大きな口がある。
上半身にくっついている女性の頭のような部位は頭として機能しているのではなく、魚の部分が本体なのだろう。
人魚の姿で油断した旅人を触手で捕らえて牙のずらりと並んだ口の中に放り込む……恐らくそんな感じの捕食手順で間違いない。
魔物の巣になっているらしい遺跡の中になど、わざわざ足を運ぶような人間は居まい。つまり自分は、呪いだか何だかの作用によって突如巣の中に放り込まれた餌も同然なのである。
遺跡の中の酸素量も分からない、出口もまだ分からないといった状態で火属性の魔法を使えば酸欠決定だ。
他三属性のうち、水棲生物らしき人魚に水属性の魔法は効果が薄そうである。となると、今選択すべきは風属性または地属性。
