それにしても、元の世界に居た頃やこちらに来た当初と比べて過保護が増している気がする。確かに昔から心配性だなとは思っていたが、これまで寝不足程度で抱えて歩くなどと言い出したことはなかった。


 海岸沿いになる東国への道は、基本的に平地の陸続きだ。東国の領土には小さな離島――東方諸島も含まれているらしく、そこまで足を運ぶとなると海を渡る手段が必要になるが今回はひとまず東の首都に向かうだけである。


 湿地の多かった南方と比べて、こちらは荒野ばかり。海に近付くにつれ荒野の比率は低くなるとは思うが、万一トラブルがあって旅程が遅れる場合、食料調達は難しい気がする。持参した分だけで東国へ着けるように注意して動く必要があるだろう。


 スマホの表示時刻はあてにならないのが分かっている。出発からタイマーを設定して時間を計算したところ、あの拠点を出てから既に四時間が経過しているようだ。フィールドマップを確認すると、東国までの直線距離で今のところ六分の一の地点だ。順調に進んでいる。


 ファンタジーにありがちなカタカナ名の付けられた平原にさしかかったあたりで、岩場から人型の魔物が襲いかかってきた。人の形に植物の蔓が凝縮されて二本足でのそのそ歩いているような、少々見た目の不気味な魔物だ。


「……物理攻撃の効かない魔物だな」


 前衛は請け負うからダメージソースは任せたと言わんばかりにヴェルターがこちらへ告げてくる。リュータも無言で前に出て、白亜の剣を構えた。