「おれはいつでもいいよ」


「……それではそこの護衛の分も含めて、自分はお部屋の用意をいたします」


 特に荷造りの必要のない自分達はすぐにでもここを発ってよかったのだが、出発を明日に延ばしたのには理由がある。あの部屋の蔵書をある程度チェックしておきたいのだ。


 世界の呪いとやらが師匠の時代に既に存在していたのかどうかも気になるし、それに関する覚え書きでも見つかれば東国到着前にある程度の対策を練ることができる。


 就寝ギリギリまではあの図書館もどきを調べておくつもりである。


「あっ、おれユウジの部屋じゃだめ?」


「ん? ああ、無駄にでかいベッドあるしな、おまえ一人くらいなら別に大丈夫だろ」


「うん! えっと、ノアさんだっけ。おれの部屋はいいよ」


 ノアが小さく会釈して、その場を後にする。かすかに舌打ちが聞こえたような気がしたが、深く考えないことにした。





「リュータ、この世界の文字は読めるか?」


「難しいのは分からないけど、簡単な文章なら大丈夫」


「よしよし。この部屋から探してほしい本があるんだ、今から手伝え」


「はあい」