貴族や王の性格の問題ではなく、敵対すれば恐ろしい、そして味方に引き入れられるなら国家としての発言力が大幅に向上する一騎当千の魔法小隊として考えればどれだけお人好しの権力者であっても見過ごすことはできないということだろう。軍人らしい意見だ。


「てことは場所がバレちまえばこの拠点で大人しくしてろってのも駄目になるか。いっそ誰かが率いてしまえば楽なんだろうけど……」


「でもあのノアって人、ユウジの言うことしか聞かなさそうだよ」


「だからって四十人以上も旅に連れてくわけにはいかないだろ」


 三人揃って沈黙する。行き詰まってしまった。何か別の視点はないか、と部屋の中をぐるりと見渡していたところに、扉の向こうからノック音が聞こえた。


「失礼いたします、大賢者様」


「……、ああ。ノアか。怪我人の具合は?」


「貴方から直々に回復魔法を施していただき、怪我どころか志気さえ上がっているほどです」


 軽い話題のつもりで投げかけた質問が爆弾になって返ってきた。処理に困っているところに志気を上げられても困る。


「そ、そっか……。ところで、何か用があったか?」


「は。世界の呪いに冒された大陸東方の国が、大賢者様のお力を借りたいとこちらまで使いを寄越してまいりました。念のため捕縛しておりますが、いかがいたしましょうか」