大賢者――ユウは、そんな仕組みなど知る由もないただの魔側の魔法使いだった。
こちらに召喚された年上の勇者と組んで打倒魔王を目指し、そして勇者は何らかのきっかけによって「魔王に触れる前に」世界のシステムに勘付き、消滅した。
勇者の残した異世界の知識と、旅路での入手情報と、魔王討伐の際に得た「知識の継承」で勇者とほぼ同じ解答に辿り着いたユウが最初に試みたのは、魔王と弱者国側の友好関係を築く方法だ。
反転させることなく、祝福を与えることなく、ただ対等に共存できはしないか。
天使がシステムから除外されることで代わりに魔王となった自分が願いを叶えなければ、祝福とされる「弱者への加護」は分配されない。
もちろん、前魔王が倒れたことによって人間の強者補正も消えている。
ここで争うつもりはないと人間側の各国に協定を申し出れば、うまいこと異世界から新たな犠牲者を呼び出すことなくこの世界だけで完結するのではないか。
試みはそう上手くいかなかった。
何十年、何百年、自分の種族の寿命の半分を費やしてなお信頼を得ることができず、とうとう人も魔も、魔王ではない二代目勇者の外見が一切変わらないことに疑問を抱き始める。
二代目勇者の受けた迫害の事実を知ったユウは、いつまでも結果の出ない理想論と感情を天秤にかけ、思わず後者を手にしてしまった。
一人の大切なこどもを守るために願いを消費し、魔王の継承を本当の意味で終えてしまった彼は新たな勇者に倒され、再び人優勢の時代に移る。
世界と天秤にかけられるほど魔王に愛された、二代目勇者はおそらく。
こちらに召喚された年上の勇者と組んで打倒魔王を目指し、そして勇者は何らかのきっかけによって「魔王に触れる前に」世界のシステムに勘付き、消滅した。
勇者の残した異世界の知識と、旅路での入手情報と、魔王討伐の際に得た「知識の継承」で勇者とほぼ同じ解答に辿り着いたユウが最初に試みたのは、魔王と弱者国側の友好関係を築く方法だ。
反転させることなく、祝福を与えることなく、ただ対等に共存できはしないか。
天使がシステムから除外されることで代わりに魔王となった自分が願いを叶えなければ、祝福とされる「弱者への加護」は分配されない。
もちろん、前魔王が倒れたことによって人間の強者補正も消えている。
ここで争うつもりはないと人間側の各国に協定を申し出れば、うまいこと異世界から新たな犠牲者を呼び出すことなくこの世界だけで完結するのではないか。
試みはそう上手くいかなかった。
何十年、何百年、自分の種族の寿命の半分を費やしてなお信頼を得ることができず、とうとう人も魔も、魔王ではない二代目勇者の外見が一切変わらないことに疑問を抱き始める。
二代目勇者の受けた迫害の事実を知ったユウは、いつまでも結果の出ない理想論と感情を天秤にかけ、思わず後者を手にしてしまった。
一人の大切なこどもを守るために願いを消費し、魔王の継承を本当の意味で終えてしまった彼は新たな勇者に倒され、再び人優勢の時代に移る。
世界と天秤にかけられるほど魔王に愛された、二代目勇者はおそらく。
