【BL】お荷物くんの奮闘記

「おれが人間や魔族になれば、地上の生き物になれたら、みんなに怖がられたり、嫌われたりしないんだね」


 自分が世界の王になりたいと思わなければ、自分の願いを叶えなければ勇者は召喚されない。それなら話は簡単だ、魔王の種を抱えたまま、オレはラスボスにはならない。魔も人も憎み合わない世界を作る。魔王が人類の敵であるという認識を改めさせれば良い。ダイゴのような犠牲者も、そうしたらもう出ない。ダイゴ。ダイゴって、誰だ。各国に友好関係を結ぼうとしばらく奔走した。のに。


「どうすれば天使を辞められるか、聞いてくる。おれ、これからもユウと一緒にいたいから」


 たのむから、いかないでくれ。こわくてたまらない。魔王を屠ったその瞬間から何日も、何十日も、何百日も頭の中を犯し続ける膨大な情報量が、ああ、悟られたくない。おまえはこれ以上苦しむべきじゃない。守ったはずの存在から傷付けられて、血を流して、それでも憎みたくないと内側に原因を求めるような、こんな子供に、これを味合わせるわけにはいかない。

そう思った途端、急に思考がクリアになった。


「どれくらいかかるか分からないけど」


「わかった。オレが爺になる前に帰ってこいよ」


「うん」


「……またな」


 人になっても、魔になっても。


 きっと人々の目は変わらない。