失敗した。
いつものように人助けに飛び回った帰り道、額から流れ落ちる血を袖で拭う。
今日は、ユウが帰ってきてないといいけど。普段なら彼の帰りを今か今かと待ち望むのだが、今日ばかりはこの怪我を見られたくなかった。
正式な勇者であれば基礎的な回復魔法を覚えられただろうが、自分は始めから代用品。回復手段を持たないから、誰かに治してもらうか回復アイテムを使うしかない。
怪我をしたことを伏せておきたいユウには無論頼めず、出先で回復アイテムを購入することもできなかった。
魔王を倒したあの旅以降、“いつまでも見た目の変わらない”二代目勇者への周囲の目は、とっくに英雄を見るものではなくなっている。
道具屋へ回復薬や止血剤を買いに行こうにも、店主が怯えるのが目に見えていて申し訳ない。
天使が成長しないというわけではないが、老化速度は地上の生き物とは大幅に異なる。その法則を無視して肉体に変化をつけるには、一度マムの元へ還らなければならないのだ。
だから、今日出先で怪我をしたという事実を隠し通すためにはユウに気付かれないように城へ戻り、買い置きされているアイテムをこっそり使わせてもらうしかないのである。
それなのに、窓へ飛んでそっと中を覗くと、部屋の中で魔術書を眺めていたユウと目が合ってしまった。普段は帰ってきていたとしても疲れてさっさとベッドに倒れ込んでいる彼が、今日に限って読書とは。自分の運の悪さに顔を顰める。
