言われる通り扉の前で火球を作る。ユウは何かの魔法を構成して、指先で炎の形を変えた。
「炎がスライムみたい」
「スライムっておまえな」
率直な感想だったが、語彙力不足を呆れられてしまった。聞けば風と地属性の魔法を混ぜて他人の炎をコントロールしているらしく、そこまでやられると魔法についての価値観というか、認識がぐちゃぐちゃになってしまいそうだ。
普通、魔法っていったら僧侶や勇者と同じように、自分のスキルに名前があって、名前に対応した消費魔力があって、その関係は一対一。ひとつ使えばひとつ分消費される技であるべきものではないか。彼のやっていることは本当にでたらめだ。
スキルに名前が付与される直前の、つまり属性が付与される直前の魔力そのものをパン生地か粘土みたいに自在に扱って、さらに一対一であるはずの魔法をそれぞれ個別に操っている。それぞれの属性を極めることで混合属性のスキルを身につけることはできるが、彼のそれは全く異質のものだ。
天才なんだな、と、魔法に疎い自分でも分かる。それと同時に、毎晩仲間に内緒で魔法の研究をしている彼を思う。天才が努力して、試行錯誤してなお実現し得ない勇者の復活。そんなものに自分なんかが口を挟むべきではないし協力できるはずもないから、知ってしまったあの日以来、その件については触れていない。
「炎がスライムみたい」
「スライムっておまえな」
率直な感想だったが、語彙力不足を呆れられてしまった。聞けば風と地属性の魔法を混ぜて他人の炎をコントロールしているらしく、そこまでやられると魔法についての価値観というか、認識がぐちゃぐちゃになってしまいそうだ。
普通、魔法っていったら僧侶や勇者と同じように、自分のスキルに名前があって、名前に対応した消費魔力があって、その関係は一対一。ひとつ使えばひとつ分消費される技であるべきものではないか。彼のやっていることは本当にでたらめだ。
スキルに名前が付与される直前の、つまり属性が付与される直前の魔力そのものをパン生地か粘土みたいに自在に扱って、さらに一対一であるはずの魔法をそれぞれ個別に操っている。それぞれの属性を極めることで混合属性のスキルを身につけることはできるが、彼のそれは全く異質のものだ。
天才なんだな、と、魔法に疎い自分でも分かる。それと同時に、毎晩仲間に内緒で魔法の研究をしている彼を思う。天才が努力して、試行錯誤してなお実現し得ない勇者の復活。そんなものに自分なんかが口を挟むべきではないし協力できるはずもないから、知ってしまったあの日以来、その件については触れていない。
