【BL】お荷物くんの奮闘記

 濡れた髪をタオルでわしわし拭きながら、現状埋まりきっていない情報のピースから全貌を推測できないかと試みる。


 勇者が存在したのは確かだ。プロフェットの言葉からして、大昔はRPGの設定そのもので魔に打ち勝つための存在として勇者が人々に望まれていた。それが、今は魔の者の住む村では被差別的環境を打破する希望として、勇者が望まれていた。大昔と状況が真逆なのだ。


 では、初代の勇者が活躍する以前――人が魔に虐げられていた時代の、もう一つ前の時代はどうだったのだろう。魔の者自体が存在しなかったのか、それとも。


 はっきりしていないものはまだ山積している。

初代勇者が倒した魔王はどういう存在だったのか。今、魔王とも世界の王とも呼ばれている存在とはどう違うのか。

人が魔に打ち勝つことをバランスを欠く行為として地上を滅ぼそうとした神。世界の王はどこからやってきたのか。

この世界の魔王を倒す存在として勇者が呼ばれたなら、何故リュータだけではなく自分もこちらに飛ばされたのか。

戦える仲間ならともかく、師匠に教わるまで魔法も使えなかった自分は勇者のお荷物も同然だった。お荷物が必要だったとも思えない。

……そこで、南の田舎国で捕まった際に自分を指名手配した人物が地下牢まで会いに来たことを思い出す。


 彼は、「あの世界から君を選別したのは私だ」「死んでもらうためにこちらに来てもらった」と話していた。そして「勇者の剣は、私の望む勇者にだけ受け継がれる剣だ」とも。

あの人物が、勇者であるリュータとは別に自分を呼び寄せたということだろうか。あの国で地位が高いなら間違いなく人間であるはずなのに、剣を手にできる勇者を望んでいると取れる発言も気になる。