【BL】お荷物くんの奮闘記

 勇者を拘束するための道具。敵対関係にある存在を始末するのではなく、捕らえるに留めようとする理由があるのだろうか。拘束するための道具というのは言葉そのままの意味ではない可能性もある。


「ありがとう。……おまえ、一応世界の王の配下なんだろ? 色々教えちまって平気なのか?」


「大丈夫じゃないかもしれないね」


 冗談交じりの笑顔を見せて、プロフェットがテーブル越しにこちらへ手を伸ばしてきた。


「あの人の意思一つで跡形もなく溶けて消えてしまう僕は、確かに作られた存在だ。だけど、僕は僕の意思で君を選んだ」


 指先は、先ほど自分が彼にしてみせたように頬へ触れる。


「ユウジ。君が好きだよ。君に恋したことを、――ぼくは誇りに思う。……いつか消えてしまうのだとしても、この確かな意思で、君を選んだのは、ぼくなんだ」


「え? ……えーと?」


 言われている意味を頭が理解する前に、隣でリュータががたんと木椅子を倒して立ち上がった。大きな音を立てて後方に吹っ飛んだ椅子に意識が向いてしまい、さらに理解が遅れる。


「あ、気にしないでいいよ、ユウジ。……今はね」


「そうか? ……おい、リュータどうした」


 ぽかんと口を開けわなわなと震えているリュータの肩を揺すってみる。彼は口を開けたまま、首にギギギと軋んだ効果音でもつきそうな動きでこちらを向く。


「……ぼくは、引くつもりはありませんよ。相手が熾天使様であっても」