先生の手が離れて寂しくなった頭に手を当てる。

それだけでも、先生に触れてるような気がする私は、もう引き返せないところまで来てるんだと思う。



「先生……」



声が喉に引っかかって掠れた。
それでも先生には聞こえて、「ん?」といつもより数倍甘い声で返事をした。



「好きな人、いる?」



顔を上げられない。

先生の顔を見ながらこんなこと聞けないし、私の顔を見られたら林檎のように真っ赤になってる理由が絶対にバレてしまう。


だって、多分……
私の目は気持ちを抑えきれなくて“好き”って言ってるもの。


近くでミツバチが羽の音を立てながら飛んでる。

校庭や体育館から聞こえる声や音が遠くに感じた。



少しの沈黙。
口から出そうなぐらい心臓が騒がしい。

この空気に耐えきれなくなって目を強く瞑った時、先生が微かに息を吸ったのがわかった。