「なぁ、向日葵の花言葉知ってるか?」



なかなか好きの二文字が言えなくて、もう話をはぐらかしてしまいたいって弱い自分が顔を出しそうに時、先生の明瞭な声が耳に入ってきた。



「え?向日葵?」



さっきまで頭は混乱していたのに、先生の問いのお陰で一気に花言葉のことで頭がいっぱいになる。



「向日葵は確か、【憧れ】とか【愛慕】とか」

「それもそうだけど、まだあるだろ」

「私が素敵だと思うのは、【私はあなただけをーーー…」



見つめる、と後に続く言葉を、先生の私を見つめる瞳があまりにも優しく甘過ぎて思わず飲み込んだ。



「俺も向日葵の花言葉の中でそれが一番好きだよ」

「それって……どういう…」

「ゆっくり大人になれ、古澤」



先生は私の頭をぽんっと撫でると、目を細めて笑った。


校庭に戻っていく大きな背中を見つめながら、先生の言葉の意味を考える。

自分に都合がいいようなあり得ないことばかりが頭に浮かんできて頭をぶんぶんと振った。

だけど、どう考えてもやっぱり行き着く先は同じところ。



「先生……私、好きでいてもいいの?」



先生の背中に問いかけながら、じわりと溢れた涙が一粒頬をスーッと流れた。



高二の夏。

早く大人になりたい、と胸を焦がした。



太陽に向かって咲く向日葵の前で。