白に近い金色の短い髪、顎にはサボテンのような無精髭。

男性が近づくにつれ、もしかしたらレックスさんかもという疑問が、やっぱり間違いなくレックスさんだという確信に変わった。



「あれっ、誰かと思えばメイベルか?何やってるんだ、こんな夜更けに」

「あぁ、いやぁ…ちょっと魔法の練習を…」



ルキがレックスさんって誰だろう、とばかりに小首を傾げていたから「レックスさんはマーグレーン街に住んでいる画家だよ」と、小声で耳打ちをした。

「あのモデムとかっていう魔獣の雑誌に載っていた人か」と小声を返してきたルキは、レックスさんと目が合うなり軽く会釈をした。



「練習って…寮の消灯時間はとっくに過ぎてんだろ?まさか抜け出したのか?」



私を見下ろすレックスさんの目が鋭く光ったような気がして、たまらず視線を逸らした。



「あー……いやぁ、そのぉ…」



レックスさんは実は、腕のある画家でありながら校長先生のひとり息子でもあり。

もしかしたら校長先生に私が脱走していたことを言うつもりなのかも、と思うと途端に冷汗が止まらなくなった。



動揺してしまってまともに言い訳すらもできない私は、助けを求めるようにルキへ視線を投げた。