「メイベルだって俺を助けてくれただろう。俺も嬉しかったし、救われたんだ。だからメイベルが困っていたら、俺も助けたい」



助けてくれた、というのは森で出会ったとき。

ルキの手を引いて、フォルスティア学園に入学させてもらえるよう、校長先生にお願いをしたことかな。

私としてはただあたり前のことをしただけなのに、ルキにとっては特別なことだったみたいでそれがなんだか嬉しかった。



「ありがとう、ルキ。気持ちが嬉しいよ」

「さぁ、魔法の練習をはじめようか。俺なりに魔法を上手く使えるコツを教えてあげるよ」

「あっ……うんっ‼お願いしますっ‼」



って、本当は魔法の練習をしたかったわけではないのだけれど。

夜にふたりきりでルキと会いたいがための口実にすぎなかったから、本音を言うとまだお喋りをしていたかったのに。



ルキはそんな私の思想など知る由もなく、ピーちゃんを左の肩に乗せたまま話しはじめた。



「メイベルは魔法の詠唱中に雑念が多すぎる。周りに人がいたり音がしたり匂いしたりすると、どうしても今考えていることと、違うことを思い浮かべたりしてしまうのはわかるけど。それじゃあ上手くいかないよ」



人は常に頭の中で何かを考えながら生きているから、と話すルキはやけに真面目な顔をしていた。



「ライザくんに馬鹿にされたくないだとか、見返してやりたいって思っているから上手くいかないんだよ。それってつまり、魔法を使うたびにライザくんのことを考えているようなものだよ」

「そう言われてみれば……確かに、ライザのばかやろうって思いながら魔法を使っているかもしれないな、私…」