「あー、そっか…そうだよね。ごめんメイベル、私にもライザにメイベルをいじめないでって言える強さがあればいいのに」

「気にしないでエイミー。これは私の問題だから、私自身で解決するから」



とりあえず今のところ解決策は、ただひたすらライザの暴言に我慢するしかないのだけれど。



「あっ、それはそうとエイミー。今夜もちょっと……ルキと会う約束をしててさ」

「えぇっ⁉またぁ⁉」

「ごめんね。またエリノア寮長に私が脱走したこと、バレないようにして欲しいんだ」



エイミーは「もう、これで最後にしてよね。もし脱走がバレたら、私も共犯者として怒られちゃうんだからね」と頬を膨らませながらも、脱走の手助けを了承してくれた。



消灯時間を過ぎると、ルキのマントを片手に持って静かに部屋からでた。

前回はたったひとりで暗闇の廊下を歩いて、幽霊がいないかとか余計なことを考えてしまって怖くて心細かったけど。

今は私の右肩にピーちゃんがいてくれるから怖くない。



ビクビクしながら下っていた階段も、今回は平常心を持ってくだることができた。



「よーし、ピーちゃん。サマラさんはいない?」



1階のトイレの扉をすり抜けて、中に入って行ったピーちゃん。

以前は中でサマラさんとばったり出会ってしまったから、トイレに入る前にピーちゃんに見てもらうことにした。



「ピピィッ」



ピーちゃんは再びトイレの扉をすり抜けて私の前まで来ると、誰もいないよ、とばかりに頷きながら鳴き声をあげた。