小鳥が天井に高く飛び上がったタイミングで『よしっ、今だっ‼』と声をあげながら、右手のひらから勢い良く水を放った。



めいっぱい蛇口をひねったホースのように、水は私の脳内に描いた通りの角度で小鳥に迫っていく。



まずは1羽、撃ち落とせたなとホッと胸を撫で下ろしたときのことだった。

赤い小鳥は『ピイイーッ』と叫ぶように鳴くと、つぶらな黒い瞳を赤く光らせた。



『えっ……⁉』



そして私の手から放たれた水が羽を濡らすよりも早く、ひらりと身をかわすとその小さな羽で私が放った水の魔法を撃ち返してきた。



まさか小鳥が反撃をしてくるなんて微塵も思っていなかった私は。



『ぶはぁっ……!』



とおかしな声をだしながら、自分が放った水を顔面から受けてしまった。



痛いくらいに勢いのある水に突き飛ばされるような形で尻もちをついてしまう。



『ぎゃっはっはっは!さすが万年最下位だな、あんなちっぽけな鳥ごときに何やってんだよ!』

『くっくっく、想像以上のおもしろさだ』



ライザとトールボットが腹を抱えて笑い出すと、ふたりの周りにいたクラスメイトたちからも笑いが巻き起こる。



馬鹿にされて悔しいやら、笑われて恥ずかしいやら、また失敗してしまって情けないやらで、尻もちをついたまま立ち上がることができなかった。



するとカサエル先生がずぶ濡れになってしまった私の元へ歩み寄ってきた。



『大丈夫か、パルディウス。残念だかその状態では試験はムリだろう。その濡れた身体を、保健室にある暖炉で温めてきなさい』



普段は厳しいくせに珍しく優しい声色で話しかけてくるものだから、視界が一気に揺らいだ。