「む……もしかして、魔獣をつくりだそうっていうのか」



壁に背中を預けたまましゃがみこんで、雑談を続ける私とエイミーの頭上からカサエル先生の声が降ってきた。

エイミーとふたり揃って顔を上げると、ライザを真っ直ぐに見つめるカサエル先生の険しい顔。



「魔獣ですって…?ライザが?いつの間に?」



カサエル先生の声にいち早く反応したのは、ライザに続き好成績を収めているクラスの優等生の女子、サビーナ・マグダクトルだ。



サビーナはセミロングの艷やかな黒髪を耳にかけると、切れ長の二重の目を細めながら眉間にシワを刻んだ。

彼女は真面目な優等生でありながら、ライザの双子の妹でもある。

魔法の扱いに至っては、やっぱりライザと双子というだけあって、クラスで2番目に魔法の成績がいい。



私は前にライザが魔獣をつくりだす場面を見せてもらったから、今更驚くことなんかないけれど。

双子の妹を含むクラスメイトたちは、ライザの右手から放たれる黒煙に目が釘付けになっていた。



「行け、俺の忠実な下僕。小賢しい鳥をすべて喰らえ」



ライザが低い声で指示を飛ばすと、宙に漂っていた黒煙はワシのような大きな鳥の姿にみるみる形をかえた。

黒い鳥のような魔獣は『ギェーッ』と不気味な鳴き声をあげると、漆黒の羽をばたつかせて赤い小鳥をめがけて目にも止まらない速さでつっこんでいった。