「神より与えられし力よ、我が糧となれ。その力を今、解放する」



体内の奥底から何か熱いものがじわじわと込み上げてくると、右手の甲が淡く光り輝きはじめた。



落ち着け、落ち着くんだ私。

手鏡を見ながら、しっかりと私の容姿を脳内に焼き付けるんだ。



鏡の中に映る私の顔は色白だけど頬は薄ピンク色で、幅の広い目はアーモンドのような形、睫毛は密集していて長くて。

胸下まであるブロンドの髪は1本1本が細く柔らかくて、真っ直ぐなんだけど先端は緩いクセがある。



よし、これだけイメージをしっかり持てていれば大丈夫だろう。



「お願い、上手くいって……!」



熱のこもった右手にぐっと力を込めると、手の甲からは淡い光が解き放たれ、カーペットの上に転がされた枕を包み込む。

枕を包んだ光はより光量を増したかと思うと、電気のスイッチを切ったかのようにすぐに消えてしまった。



すると私の足元には、どこからどう見てもメイベル・パルディウスの分身と化した枕が……。



「って、なんじゃこりゃっ⁉」



足元に転がっていたのはまさに私そのもの……ではなく、頭部だけだった。

顔はまぁ……確かに私だけれど、その白い頬に触れてみるとそば殻のカシャカシャとした感触が残っていて、それは分身というよりも私の顔をリアルに再現したただの気持ちが悪い枕だ。



はぁ、また失敗か。

私としたことが、顔にばかり集中してしまって身体をイメージし忘れていたなんて。



「あははははっ!ちょっとメイベル!頭だけじゃなくて、ちゃんと全体像をイメージしなきゃ駄目でしょ!あと、肌の艶感とか感触も、もっともっと細部までイメージしなきゃ」

「むぅぅ……」



火照りはじめた頬を膨らませると、『私の顔にそっくりな気持ちが悪い枕』を抱きかかえ、口を尖らせた。