しかもエリノア寮長は、部屋の扉を開けて生徒が騒いでいないか、ちゃんと部屋にいるのかを確認するという仕事も担っている。



「エリノア寮長が部屋まで来たときに、私はもう疲れて寝てますって言ってくれないかな?布団の中に枕とかクッションとかを詰めて、いかにもそこに私が寝てるように細工なんかしてさぁ」



エリノア寮長に私がいないことが見つかれば、すぐに寮母や担任のカサエル先生に言いつけられる。

ふくよかな40代くらいの寮母のサマラさんは、とっても優しくて滅多に怒らないし、たった1回の脱走がバレたくらい問題なさそうだけれど。

鬼教師のカサエル先生の耳に入れば、1週間……いや、毎日1ヶ月間1年生の教室の居残り掃除の刑は免れない。



「んもぅ、仕方がないなぁメイベルは。協力してあげるよ」

「ありがとうっ、エイミー!」

「脱走がよりバレないようにするために、ちゃんと準備しなくちゃだめよ?いい?布団の中に枕とかクッションじゃあバレバレよ」



別に布団を剥ぎ取ってまで顔を確認はしないだろうし、なんとか誤魔化せそうだけれど…。

という私の推測は、エイミーに言わせれば甘すぎるみたいだ。



「バカ、顔まで布団を被って寝てるなんておかしいでしょっ。そんなことよりももっと自然に誤魔化せる方法があるでしょ?」

「えーっ、なに?例えば?」

「そのクッションとか枕を使って、魔法でメイベルの分身を作るのよ‼」