『でもひとめにつくのは嫌だから、やるのは明日の放課後に誰もいなければ第一実技室でやる。もしくは今夜の22時に寮が消灯したあと、外でやるか。どっちがいいか、メイベルが選んでくれていいよ』
レンガ張りの外観の、5階建てのアパートのような男子寮の前まで来たときにルキが言っていた言葉を思い返した。
迷うことなく『今夜がいい!』と答えた私は、寮に戻ったあともルキの手の感触や温もりがまだ頭に残っていて、ニヤニヤを止めることができなかった。
勉強机に向かって『魔法』の教科書を広げるものの。
夜にこっそりと寮から抜け出してルキとふたりきりで会う、というドキドキなワードに、妙に胸の鼓動を煽られてしまって。
心臓がバクバクと激しく鼓動を打ったまま、なかなか落ち着いてくれない。
『でも夜になると魔獣はより活発になるから……また襲われないか怖いな』
ルキが男子寮へ向いて歩きはじめたときに、私がそんなことをぽつりと呟くと『大丈夫。そうなったらまた俺が守るから』そう言い残し、颯爽と寮へ消えた彼の言葉を思い返すたびに、さらに胸のドキドキが加速してしまう。
「はぁ……素敵。素敵すぎるよぅ……」
魔法の教科書に書かれている文字がすべて『ルキ』に見えてくる。
教科書の左下に描かれている『様々な魔獣』のイラストが、すべて『ルキの笑顔』に見えてくる。
そんな私はきっと、というか確実に……ルキに恋をしてしまったみたい。


