へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする



ライザは私とトールボットから3メートルほど距離をとった位置で、手のひらを見せるような形で右手を前へ伸ばした。



「神より与えられし力よ、我が糧となれ。その力をいま、解放する」



ライザが低い声で魔法の詠唱をはじめると、実技室を満たす空気が張り詰める。

離れた場所で魔法の練習をしていた初等部の生徒たちも、中等部の生徒たちも、その手を止めライザを振り向くほどだ。



ライザの右手のひらから、黒煙のようなものが放たれた。

煙はまるで空気を侵食しているかのように、ぼんやりと広がり、だんだんと大きくなっていく。



「ライザ、なにを……するつもりなの?」



不気味に揺らめく黒煙に、背中に悪寒がぞわりと走る。

ライザの右手のひらから放たれた煙は、私が森の中で遭遇した魔獣となんだか似ている。



空気中を漂う黒煙は互いに吸い寄せられるようにして一箇所に集まり、その形を大きくさせ、牙を剥き出しにするオオカミへと変貌したできごと。

ライザが放ったそれは、まさしく森の中で遭遇した魔獣のようだった。



もしかしてライザは、これから魔獣をつくろうとしているの?

いや、まさかね。

だって魔獣をつくるには毛の一本一本まで脳内で描くような、高い想像力と集中力が必要になってくるんだ。



まぁライザのように多種多様な魔法を扱えるような人なら、魔獣をつくるほどの高い想像力や集中力があってもおかしいことではないのだけれど。

私が最も問題視しているのは、魔獣をつくるにあたってはたくさんの魔力を消耗するということ。