「ファンだなんてそんな…。私にとって彼は……」



命の恩人なんだ、と言いかけたところで口をつぐんだ。

校長先生に、絶対に誰にも言ってはいけないと言われたことをハッと思い出した。



ルキがたったの一撃で巨大な魔獣を消したことや、校門の防衛魔法を破ったことは、何があっても秘密にするようにと。

彼がとてつもない力を秘めた魔法使いだと皆に知れ渡ってしまえば、クラスどころか学校中が混乱してしまうかららしい。



「私にとって彼は……なに?」

「えっ、あっ……やっぱりなんでもないっ」



エイミーになんだか変なメイベル、と首を傾げられ、誤魔化すようにして笑い声を上げた。



休み時間に入るたびにクラスメイトに囲まれてしまうルキと、この日は結局、一言も会話を交わすことができないまま下校時間を迎えてしまった。



なんだかルキが遠い存在になってしまったみたいで寂しい…。



ルキの笑顔ばかりをぼんやりと思い浮かべながら「ねぇエイミー、やっぱり今日は寮に帰って勉強することにする」と、まだ教室に残るクラスメイトたちに混ざり談笑しているエイミーの肩を叩き、言葉も待たずに教室を出た。