ルキだってレックスさんのことを慕っていたんだ。

湖のほとりで釣りをするレックスさんの横顔を見ながら『この人を守っていかなきゃな』そう思ったくらい、大切に思っていたんだ。



「そうだとしても俺は、俺が理想とする世界をつくる。弱者はいらない。俺と対等にたたかえるような、強い者だけの世界をつくるんだよ。白龍の記憶を消す力があれば、こんなちっぽけな国ぐらい俺のものにできるからな」



生き残った強い者の記憶を消させ、俺のことを王だと認識させる。

そうなればもうこの国は俺のものだ、と笑うレックスさんの恐ろしい計画に身震いがした。



この人には、もうなにを言っても響かないんだ。

人間でありながら人間の心をなくしてしまったレックスさんこそが、私の目には魔獣のように映った。



「俺があなたの望みを叶えると約束すれば、メイベルのことを助けてもらえるんだな?」



ルキの気持ちが揺らいでいると感じた私は、「駄目だよルキ‼」と声を張り上げた。



ルキは私の声に反応することはなく、睨むようにレックスさんを見続けている。



「ああ、約束してやるよ。俺に忠誠を誓う意思表示として、今すぐメイベルの記憶をすべて消すんだ。ちゃんとできれば、メイベルのことは無事に寮まで送り届けてやるからよ」