あんなところにいたんじゃあ、レックスさんが放つ氷柱の流れ弾をくらってしまう!



「ピーちゃん危ない‼」



早くピーちゃんを安全な場所に避難させてあげなきゃ、と焦った私は無我夢中で氷柱の盾となってくれていた木の幹を離れた。



地面を覆い隠す枯れ葉を蹴り、慌ててピーちゃんの元へ駆け出した瞬間のこと。



「うっ……ああぁっ‼」



左の太ももの裏側に激痛が走った。

声にならない声を出しながら地面に倒れ込んだ。

脂汗が吹き出すほどの激しい痛み。



痛みにのたうち周りながら太ももの裏側に手を伸ばし、20センチほどの氷柱を引き抜くとまるで噴水のように血が飛び散った。



「ああああっ……‼痛いっ‼」



なにをやっているんだろう……私は。

ルキに逃げろって言われたにも関わらず、嫌だなんて調子に乗ったことを言ってしまって。

レックスさんの気を失わせるほどの魔力もないくせに、レックスさんと闘うだなんて。

魔導警察に引き渡してやるだなんて。



それなのに私は、ひたすら逃げ回ることしかできなくて。

私を助けてくれたピーちゃんのことだって、ろくに守れなくて。



守ってもらってばかりで、なにもできない自分が嫌い。

自分で自分を殴ってやりたいほど情けなくて、悔しくて悔しくて、強く噛み締めた唇から血の味がした。