もう二度と逃げられないようにしなきゃな、と笑ったレックスさんの両手のひらが、青白い光を纏っていることに気が付いた。

レックスさんが両腕を真横に伸ばした瞬間、青白い光を纏った手のひらから数えきれないほどの氷柱が私とルキを目がけて一斉に放たれた。



「うわぁっ……‼」



防衛魔法を使えるだけの魔力がない私は、咄嗟に付近の木の幹に身を隠した。

直後に、背中を預けた幹の裏側に氷柱がいくつか突き刺さったのか、ぶつかった氷柱同士の氷の破片がバラバラ飛んできた。



「あぁ……危なかったぁ…」



あと1秒でも木に隠れることが遅ければ、私は蜂の巣みたいに穴だらけになっていたんだだろうなと思うと、背筋がひゅっと寒くなった。



ルキは逃げられたのかな?

ちらりと木の幹から顔を覗かせると、ルキは咄嗟に防衛魔法を張ったようだった。

まるで無茶苦茶に乱射されるマシンガンのような氷柱の中に立ち、攻撃の手を止める様子もないレックスさんと向き合っている。



「良かった……さすがはルキだね」



レックスさんが最強の魔獣、と言っていた理由がわかる。

何が凄いって、ルキの前に張られた壁状の防衛魔法に当たった氷柱がそっくりそのままレックスさんに向かって跳ね返っている。

これはきっと『リフレクション』という名がついた魔法で、相手の魔法をそのまま跳ね返すという幻しの魔法だ。