「黙って聞いていれば……それはどういうことだ?メイベル、お前まさかこの俺を魔導警察署に突き出すつもりなのか?」



レックスさんから笑顔がなくなった。

私を真っ直ぐに見つめるその視線は冷ややかだ。



私が「そのつもりです」と表情を強張らせながら頷ずくと、レックスさんの表情にますます影が落ちる。



「誰があんな豚小屋みてぇなところに入るかよ。凶暴な魔獣をつかって人を襲っていたのがこの俺だってチクるつもりなら、悪いが俺はメイベルを殺さなきゃならないな」



ったく、面倒なことになっちまったな。

そうため息まじりに呟いたレックスさんは「じゃあ俺の悪事が暴かれないうちに、さっさと消すとするかな」と、不敵に笑いかけてきた。

右手で表情を強張らせたままの私を指差すと、レックスさんは指の先からサッカーボールほどの大きさの光の玉を勢い良く3つ飛ばしてきた。



「メイベル、危ない‼」



5メートルという近距離で放たれた魔法を、咄嗟に防いでくれたのは、一瞬にして見慣れた銀髪の少年の姿へ変わったルキだった。

私の背後から火の玉を素早く3つ放ち、レックスさんが放った光の玉を打ち落としてくれた。



「あ……ありがとう、ルキ…」



いきなり魔法で攻撃をしてくるもんだから、驚いて声をあげることもできなかった。

ルキが助けてくれなかったら、今頃どうなっていたのかと顔から血の気が引いた。



レックスさんはそんな私には見向きもせず、私の前に立ったルキを見て、目を見開きながら驚いている。



「あっ……お前は、よくメイベルと一緒にいた少年じゃねぇか‼おいおい、いったい何に変身して行方をくらましていたのかと思えば…こんなに近くにいたなんてな」