だからこそ、ルキが記憶を取り戻したその瞬間が怖いんだ。

ルキが言っていた大切な人の元へ行ってしまうような気がして。

一度離れてしまえば、もう会えないんじゃないか。



これからルキが私に言わんとしていることが、私を突き放すような冷たい言葉なんじゃないかって不安で、怖くてたまらない。



その気持ちは、第三者のエイミーにはわかりっこない。

ルキに拒絶されたらどうしようって、ビクビクしてしまうこの気持ちは私にしかわからないことなんだ。



深いため息を吐いたその時、私の両手のひらに座っているピーちゃんが突然、するりと手から飛び降りた。

勉強机に向かう私のすぐ隣に立って「ピピィッ‼」と長く垂れ下がった耳をバタバタさせながら、そのつぶらな黒い瞳をカッと光らせた。



「わわっ……‼」



ピーちゃんの瞳から放たれた光は、一瞬にして部屋を満たしたあと、空気に溶け込むようにして消えていった。

咄嗟に閉じた目を、恐る恐る開けてみる。



「……って、えぇ⁉なにっ⁉なんで私がいるの⁉」



ピーちゃんがちょこんと座っていた場所には何故かピーちゃんの姿はなく、どういうことかそこには私が立っていた。