「助けてもらえるような立場じゃないって?それっていったいどういう意味なの?」



誰かに助けてもらうことが、この少年にとっては贅沢だというの?

それなのに、少年が誰かを助けることは当たり前だというの?



「キミと話していて、ほんの少しだけ思い出した。俺は誰かを助けるためだけに、この世に生みだされたということを」

「助けるためだけに……」



うわ言のように、彼の口から放たれた悲しい言葉を繰り返した。



彼は今までどんな生活をしていたの?

もしかして今までずっと、誰かの奴隷として生きてきた?

人を助けるばかりで、それなのに誰にも助けてもらえないような、そんな辛い人生を歩んできていたというの?



もしそうだとすれば、少年はどれほど寂しくて悲しい思いをしてきたの…。

少年が歩んできた人生が、暗く辛いものではなくて、楽しい人生であればいいのに。

心の底からそんなことを思った。



失われた記憶が光輝くような人生であれば、少年はきっと笑顔で故郷に帰れるのにな。



「……そうだっ!」



暗く重たい空気を薙ぎ払うかのように、明るい声を弾ませた。

走る速度を保ったまま、笑顔で振り返ると、少年の銀色の瞳と視線がぶつかった。



「ねぇっ!あなたが自分の名前を思い出せるまでの間、ルキって呼んでもいい?」

「……ルキ?」

「そう。名前がわからないから、なんて呼べばいいのかもわからないし…。私が勝手に考えたんだけど……どうかな?」