「ねぇピーちゃん。ルキは大丈夫かなぁ…心配だから今日は早く登校しようかな?」



洗面台で長い髪をとかしながら、当たり前のように私の右肩に座るピーちゃんに話しかけてみた。

ピーちゃんは私を見上げながら「うん、それがいいよ!」とばかりに「ピピィッ‼」と鳴くと、長い耳をバタバタとさせる。



そんな私とピーちゃんの様子をすぐ隣で見ていたエイミーが、「なんだかピーちゃんって、ちゃんと喜怒哀楽があるよね」とアイシャドウを塗りながらクスクスと笑っていた。



「そう言われてみれば確かにね…。さっきも、耳をバタバタさせて嬉しそうだったもんね」

「ふつうは魔獣ってさ、人間の言うことを良くきく感情のないロボットみたいなもんじゃん?ほら、寮を守ってる校長先生の魔獣だって…」



人間のような姿で鎧を被り、手にはフォークにも似た大きな武器を持ったあの魔獣。

エイミーはあの魔獣におはよう、とたまに声をかけるらしいけど、決まっていつも無反応だからムカつく、と不満げな声を洩らした。



「なんだろう……ピーちゃんは特別な子なのかな?」



エイミーに言われてはじめて、ルキに会えて喜んだり、ルキと別れるときに寂しそうに鳴くピーちゃんに他の魔獣にはない違和感を覚えた。

まるで人間のような感情があるみたい。