「まぁ、少年の記憶が消されたっつーならそれは間違いなく俺の龍の仕業だろうな。あんな特殊な魔法が使えるのは、俺が知っている限りはあの龍だけだ」



それはすまなかったな、とルキを見るレックスさんは申し訳なさそうに眉間を歪めている。



「そうか……そうだったのか。俺はその話せる龍に記憶を消されたのか」



ほとんどの記憶を消されてしまったルキは、ここまで話してもやっぱり何も思い出せないようだった。

レックスさんに「悪いことをしたな」と謝られながら、頭にぽんぽんと手を触れられたルキは何も言い返さなかった。

急に私が龍に記憶を消された、なんて言ったものだからルキはまだ頭の整理ができていないのかもしれない。



「じゃあ、俺は森へ龍を探しに行く。お前らも夜中にこそこそ密会なんかしてないで、さっさと帰れよな。イチャイチャするならこんな物騒な場所はやめとけ」

「そんなっ!イチャイチャだなんて違いますっ……‼」



けらけらと笑いながら森へ歩いて行くレックスさんに、咄嗟に言い返したけどレックスさんから言葉が返ってくることはなかった。

そのまま真っ直ぐ歩いて森の中へ消えてゆくレックスさんを見届け、ふと無言を貫いたままのルキが気になって隣へ目をやった。



「ルキ……?そろそろ私たちも帰ろうか?大切な話しっていうのは、ルキが龍に記憶を消されたかもしれないってことだったの」