へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする



声をあげながら倒れ込む大蛇。



さすがはルキだ。

5つ同時に火を操ることですら難しいのに、その全てを命中させるなんて。



「いや、まだだよ。もっともっと強力な魔法じゃなきゃ、どうやら通用しないみたいだね」

「……えっ?」



意外とあっけなく勝負がついたな、とルキの背後から離れようとした直後。

辺りのモミの木をなぎ倒しながら倒れ込んだ大蛇が、再び「ギィィーッ」と鳴き声をあげながら起き上がった。



大蛇は燃えるように赤い目を鋭く光らせたかと思うと、鋭い牙を剥き出しにして私とルキに向かって猛突進をしてきた。



「ぎゃあぁあぁあぁっ‼ルキっ!来るっ‼来るよぉぉぉっ‼」



すぐさまルキの背中に飛びついた。



「はは、そんなにしがみつかなくても……」

「ちょっとちょっと‼ルキっ……どうするの⁉」

「大丈夫だって」



ルキはライザとの決闘で見せたときのように、一瞬にして自身の前に分厚いガラス板のような防衛魔法を張った。



危ない危ない……間一髪、噛まれなくてすんだ。

へなへなと膝から崩れ落ちるようにして座り込みながらも、ルキの服の裾を持つ手だけは離さなかった。



大蛇は獰猛な目をギラギラと光らせながら、長く太い尾で狂ったように防衛魔法を殴っている。

尾が大きな音を立てて防衛魔法を殴るたびに、壁を通してズシンと重みが伝わってくると同時に地面が揺れる。