ルキの上下とも黒いパジャマの裾をぎゅっと掴む。
大型バスをも飲み込めるほどの巨体は、幼い頃に天井を突き破って現れた、いつかの白い大蛇になんだか似ていて。
泣きじゃくる私に牙を向けた大蛇。
そんな、10年前の恐怖の記憶が甦ってくる。
ルキにしがみつく手がカタカタと震える。
「だめ……逃げなきゃ」
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ、メイベル」
すっかり血の気が引いてしまった顔を恐る恐るあげると、ルキは緊迫した空気の中でも私を見下ろしながら笑っていた。
「だってあんな化け物……」
「大丈夫。メイベルのことは俺が必ず守るから」
きゅん、と胸が疼く。
怖くて仕方がなかったはずなのに、ルキの手が私の頭に乗せられた瞬間に、恐怖なんてものは一気に吹き飛んでしまった。
ルキは私に背を向けると、じわじわと迫りくる大蛇に向かって右手を前に突き出し、野球ボールほどの大きさの青い火の玉を5つ放った。
5つの火の玉は青い火の粉を撒き散らしながら、勢いよく大蛇に向かって飛んでいく。
「すっ……すごい…」
5つの火の玉が大蛇の頭や胴体、尾に勢いを保ったままぶつかり、静寂に包まれていた辺りに大蛇の「ギィィーッ」と苦しそうな鳴き声が轟いた。


