ルキの優しさに胸がどくん、と高波をあげる。
「うっ……うん、だっだだだ大丈夫っ‼」
目の前に立つルキにドキドキし過ぎているせいか、明らかに挙動がおかしくなってしまう。
不自然極まりない私をルキが不思議そうな目で「どうしたの?いつもと様子が違う」なんて顔を近づけたりするもんだから「ひゃあっ‼」と叫びながら思わず後ずさりしてしまった。
「いやっ、あのっ、普通‼普通すぎるくらい私は普通だからぜんっぜん大丈夫っ!」
「そう?それならいいんだけど……」
ルキは「もしかして体調が悪い?」だなんてまだ心配をしながら、私の真っ赤になっているはずの顔を覗き込むようにして見ている。
かと思えば急にはっと顔をあげ、素早く後ろを振り返った。
「メイベル、危ないから下がって!」
「えっ、なに?どうしたのルキ?」
左肩に乗っていたピーちゃんを私の肩の上に戻すと、呆然とする私から3歩ほど離れた。
ルキの向いている先に視線を巡らせると、フォルスティア学園に続く白い小道の奥に、黒く大きな影が見えた。
「なに……?大きな蛇みたいな…」
50メートルくらい離れた場所でもわかる、蛇のようなシルエットの細くて長い身体。
頭から尾まで10メートルはありそうな巨体は、うねうねと地面を這うようにして、私とルキに向かってゆっくりと近付いてくる。
「魔獣だ。どうやら俺たちを襲うつもりのようだね。メイベル、絶対に俺のそばを離れたら駄目だよ。満月に近い月の光を浴びているから、魔力が高まっているだろうからね。きっと手強いはずだ」
「う……うん」


